「3H」はどこまで浸透している?
スポーツの現場で活動するうえで、トレーナーだけではなくアスリート自身や保護者、そして指導者が抑えておかなければいけないキーワードの1つとして「3H」というものがあります。
これは3つのスポーツ現場における命に関わるリスクの高い緊急性の高い疾患の頭文字を取ったものです。
「Heart(心臓突然死)」
「Head(頭頚部外傷)」
「Heat(熱中症)」
今の日本での出会う確率だけを見ると、熱中症が比較的多く、競技によっては頭頚部外傷も比較的多い。一方で、心臓突然死はかなり稀なケースです。
しかし、これらの疾患に対する最低限の正しい知識を持っていることはスポーツ現場にいるうえで重要なことだと言えます。
今回は、この3つの話題に対する最新のトピックを見てみましょう。
【心臓突然死のアメリカでの進捗】
心臓突然死は誰にでも起こる可能性がある疾患です。
しかし、実際に突然死の発生はどう変化しているでしょうか?
NCAA(米国の全米大学体育協会)による過去20年のデータから分析した文献が出ており、興味深く拝見してみると、
・心臓突然死の発生率は減少している
・男性、黒人、バスケットボール選手は発生率の高さと関係がある
といった見解が示されていました。
アメリカのATCの配置に関する法律の変化など、色々な視点を加味すると、この傾向は納得のいくものだと感じます。実際に、文献内では心停止後の蘇生率の上昇に関しても言及されています。
また、性別や人種、競技による違いなどは興味深く、日本人では一体どのような形になるのか気になるところです。(バスケットボール選手は比較的身長の高い選手が多いと思うので、手足の長さなどの先天的なリスクが高くなっていたりするのかな?とも思ったり)
【進歩を続けるHeadacheへの見解】
頭頚部外傷の中でも、常に議論の的として挙がってくることが多い話題が、「脳振盪(Concussion)」です。これはどれだけ議論してもすぐには答えがでない問題の筆頭ではないかと思います。
最近では、脳振盪に対するスポーツ関係者の知見も広がりつつあります。
最近書店では、有名な脳振盪の専門のドクターの方の書籍も出ています↓
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そんな脳振盪に関しては、2001年から4年に1度(五輪みたいですね)世界的な会議が行われており、ここで世界的な方針の転換が大きく起こります。
直近だと2023年にアムステルダム声明が出ています。
声明の中では、脳振盪の評価ツールである「SCAT6」「CRT6」「SCOAT6」などが出てきますが、今回の声明の中でも少し変更がなされています。
何といっても今回の大きな変更点は
「SCOAT6(Sports Concussion Office assessment tool)」です。
このツールは負傷後 72 時間以降の診察室環境での評価や管理、そしてその後の継続的な評価のためのツールとして設計されています。
このようなツールが設計されていることからも、少しずつですが脳振盪に関する知見が蓄積されてきているのかなと感じます。
現状日本語版は出ていませんが、今後発表されれば日常的に使用されるようになってくるかもしれません。
次の会議ではどのような話題が議論されるのか必見です。
【最近の日本でも重要視、やばい暑さ】
ここ数年の日本の夏はちょっと暑すぎます。
そんな暑さの中で注意しなければいけないのが「熱中症」です。また、「熱中症警戒アラート」なんてものが発令されるような状況になり、スポーツをするのが少し難しくなってきているのも事実です。
こんな暑さに対する対策として、オーストラリアではスポーツ実施の際のリスク評価や簡単なアドバイスが行われるアプリケーションが開発されているようです↓
この文献では2024年の改良版という形で出されており、より更新された対策が提案されています。
このアプリでは、オーストラリアでのあらゆる場所での30以上のスポーツのリスクを、環境変数(温度、相対湿度、平均放射温度、風速)と個人変数(着衣、代謝率)を考慮したモデルによって評価しており、スポーツをより安全に楽しむことに貢献していると言えます。
日本でも「WBGT」という言葉が少しずつ浸透してきていますが、いかにして安全にスポーツを行うのか?という観点での暑さとの共存戦略は未だに不十分です。
こういった事例は非常に示唆に富んだモデルケースなのかもしれません。
こうやって見ていくと、「3H」というヘビーな話題も切り口次第では色々な視点で考えていくことができますね。
興味がある話題との接点を探していけば、より面白く学んでいくことが出来そうです。
【参考文献】
1)Bradley J Petek et al. Sudden Cardiac Death in National Collegiate Athletic Association Athletes: A 20-Year Study. Circulation. 2024; 149(2): 80–90.
2)Jon S Patricios et al. Consensus statement on concussion in sport: the 6th International Conference on Concussion in Sport– Amsterdam, October 2022. Br J Sports Med. 2023; 57: 695–711.
3)Federico Tartarini et al. The Sports Medicine Australia extreme heat risk and response guidelines and web tool. Journal of Science and Medicine in Sport. 2025; 28: 690–699.