第7回 TREC Lab.勉強会

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2026.2.21 開催

体育教育から考える『身体を学ぶ』ということ
生涯にわたる身体との付き合い方を、学校教育は教えられているのか?

セッションの要点

①体育とは? 体育は単に運動技能やスポーツの技術を習得するための教科ではない。文部科学省の学習指導要領では、保健体育は「生涯にわたって健康で豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を育成すること」を目的としている。つまり体育は、子どもたちが将来にわたって身体活動とどのように関わっていくかを学ぶ「生涯スポーツ・生涯健康の入り口」として位置づけられている。
また体育では、多様な運動種目を経験することで身体技能を高めるだけでなく、仲間と協力することやルールを守ることなど、社会性を育む役割も担っている。身体を動かす活動を通して、他者と関わりながら学ぶことができる点は体育の大きな特徴である。
しかし現実の学校現場では、体育が本来目指しているこれらの目的が十分に意識されているとは限らない。授業が運動技能の習得や競技中心になりがちな場面も多く見られる。体育の本来の役割を考えるためには、「学校体育は子どもたちの将来の身体との関わり方を本当に育てられているのか」という問いを改めて考える必要がある。

②体育の現状と課題 現在の体育教育には、子どもたちの実態と教育現場の両面から課題が指摘されている。まず子どもたちの側面では、体力や運動習慣、運動に対する意識の「二極化」が進んでいる。全国体力調査の結果からは、運動時間が長い児童生徒ほど体力が高く、運動が好きな子どもほど体力が高い傾向があることが示されている。一方で、運動が苦手な子どもや運動習慣が少ない子どもは体力も低く、差が広がる傾向が見られる。
また男女差にも特徴があり、男子では運動が好きと答える割合が増加しているのに対し、女子では減少傾向が見られるなど、運動に対する意識の違いも課題となっている。
教育現場の視点から見ると、体育授業は球技中心でゲーム形式の活動が多く、技能差が出やすいという特徴がある。さらに学習評価においては、本来「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の三つの観点で評価することが求められているが、実際には技能中心の評価になりやすい。こうした評価は運動が苦手な生徒に劣等感を与える可能性があり、体育嫌いを生む要因にもなり得る。

③体育を変えるために何が必要か? これらの課題を踏まえると、これからの体育教育では身体活動の価値を多様な視点から捉えることが重要になる。体育を単に「上手い・下手」で評価するのではなく、身体を動かす楽しさや仲間との関わり、努力や工夫といった多面的な価値を大切にする必要がある。
また学校段階ごとに体育の目的を整理することも重要である。小学校では、様々な動きを経験しながら基礎的な身体感覚や動きづくりを育てることが重視される。中学校では、スポーツに活かされる技能や知識を学び、戦術理解やフィジカルリテラシーを高めていく。そして高校では、ニュースポーツやレクリエーションなどを通して、スポーツと多様な形で関わる力を育てることが求められる。
さらに、すべての生徒が参加できる授業づくりも重要である。生徒一人ひとりが活躍できる場を意図的に設け、仲間との関わりを促すことで、心理的安心感や自己有能感を高めることができる。体育は学校の授業だけで完結するものではなく、生涯にわたって身体と向き合う力を育てる教育である。その視点を持つことが、これからの体育を変えるために必要だと考えられる。

資料プレビュー

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CHAPTERS

  • 00:00 オープニング
  • 10:00 トピック1
  • 20:00 トピック2
  • 30:00 まとめ

SPEAKER

齊藤崇仁
齊藤崇仁 中学高校保健体育教員
(一種免許・専修免許)

中学生の頃教員の道を志し、大学では心理学(スポーツ心理)を専攻。大学卒業後、免許取得のため筑波大学体育専門学群で2年間科目等履修生として体育教育を勉強。

その後、教育をより深く学びたいと考え筑波大学大学院教育学学位プログラムへ進学。様々な分野を学んだからこそ体育を多角的な目線から見つめ、より良い体育のあり方を研究中。

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